湖を運べ
熱帯魚水槽の引越し
猛暑の夏、引越すことになりました。魚の引越しには後で書くような下準備が必要です。引越し迄の日数が少ないので、すぐに物件探しと水槽移動の準備を始めました。始めてみると物件探しの方にとても苦労し、お盆休みの蒸し風呂のような空気の中、連日歩き回ることになりました。気になるのは床の構造、水回りの位置関係、水槽の搬入経路など魚のための条件と、もちろん人間の生活上の条件です。時間と体力をかなり消耗してしまいましたが、夏場の室内の温度上昇を実際に確認して決めることは出来ました。次はエアコンの設置です。都市の温暖化の影響をまともに受ける土地柄、とにかくこれがないと魚は置けません。今夏この時期この地区では、大型家電店でも殆どの機種が完売在庫切れで気に入ったものはすぐには買えず、さらに取付け工事も需要過多で予約が取り辛く予定より大きく遅れてしまいました。苦労の末、どうにかエアコンを設置して、水槽搬入の準備が出来ました。ところで観賞魚水槽の引越しには専門の業者があります。大体の見積もりを取ったところ、パッキングから輸送後の設置まで全ておまかせで今回の引越しを依頼すると25〜30万円とのこと。自分でやることにしました。首都圏(?)で移動距離は約60キロ。そのうち約40キロは高速道路が使えます。


移動する(稼働中の)水槽は60cmから120cmまで合計8本。もちろん水を抜き機材をバラして運ぶことになりますが、濾材が一杯に入った大型外部式フィルターは水を抜いても一人で運ぶには結構重いので、濾材は袋詰めで運ぶことにしました。引越し先で再セットしたとき汚泥が流れ出すのを防ぐため、濾材は洗う必要があります。しかし、これを移動当日にやったのでは時間がかかりすぎますので、予めフィルターを掃除しておきました。移動日の3日位前からはエサを抜くことも大切です。


外部式のフィルターは「ダブルタップ」でホースを外しコックを閉じて水と濾材が入ったまま運べるので引越しは意外に楽です。数時間程度の密閉では濾過細菌が致命的なダメージを受けることはありません。アクリル120cm水槽、ガラス90cm水槽は完全に空ならば自分一人で運べる重さですが、底砂に意外と重量があります。当日の作業時間を考えて予め砂を出しておきました。60cm水槽は水を抜けば底砂は残っていても自分で運べる重さです。しかし、砂の入った水槽を移動すると持ち上げたときに水槽が歪み、後で水漏れを起こすことがあるので注意する必要があります。私は60cm水槽の下にコンパネ(板)を敷いていますが、ガムテープで水槽をこの板に固定し、移動するときは板の部分だけをもって(板に水槽を載せた状態で)持ち上げ、ガラスには力が掛からないようにして運びます。

取り出した砂は再セット時に汚泥が巻き上がらないよう、良く洗って乾燥させておきました。新品同様です。


まずはベランダでカワバタモロコとメダカを飼育しているポリコンテナと睡蓮鉢を運んでみました。水を少しだけ残して容器ごと厚手の大きいビニール袋に入れ、車で運びました。魚は出して別のビニール袋にパッキングすることをお勧めします。小さい魚は波やうねりに呑まれると意外と簡単に死んでしまいます。コンテナや鉢の中の水は車で移動中、洗濯機の中のように激しく撹拌されます。近距離で穏やかな運転が可能な場合は生かして運ぶことが可能ですが、魚にダメージはあるようです。


シクリッドの運搬に使うのは厚手のビニール袋、輪ゴム、水漏れに備えて二重に包む手提げポリ袋、これは白色なので魚の目隠しにもなります。ポリタンクで水槽の飼育水も運びました。引越し先の水道水の水質も予め調べてあります。これは今迄のものと殆ど同じです。また別ページで紹介しているように、私のタンガニイカ用の飼育水は浄水器を通した後、薬品で調製していますので、引越し先の新水でも今迄とほぼ同じ水が調製出来ますが、3分の1程度は水槽の飼育水をポリタンクで持って行くことにしました。


水槽からの排水やビニール袋への注水は、重力任せのホース排水や手動ポンプでは時間が掛かります。風呂用の電動ポンプを使うと便利です。重い物を運ぶときはゴムの滑り止めが付いた手袋がとても役に立ちます。右の60cm水槽はセットして約10年の水草水槽です。これで3回目の引越しになりますが、最初の引越しのとき板にガムテープで固定したままです。毎回水と魚だけ出して、板に乗せた状態で(板を持ち上げるようにして)運びます。


さて、いよいよシクリッド水槽の移動です。魚は1匹ずつビニール袋にパッキングして運びます。熱帯魚店ではボンベの酸素を袋に封入しますが、一般の家庭にはそんなものはありません。熱帯魚店で酸素のスプレー缶が売られていますが、容量の割に値段が高く使う気になりません。実はボンベの酸素でなくても普通の空気を封入すれば今回のような大きさの魚でも(多くの場合)数時間は大丈夫です。また口から吹き出した息で袋を膨らませても大丈夫です。吐息には酸素が少なく二酸化炭素が多いという心配もありますが、袋を膨らませるときは吸った空気をすぐに吐くのでそれ程問題にはならないと思います。しかし、やはり魚をビニール袋に入れておく時間は最短にしたいので、水槽移動の手順を工夫しました。まずは空の60cm水槽(水槽が沢山ある家には空の60cm水槽の1−2本はいつでもあるものです?)に本水槽の水を移しエアレーションして魚を移動します。次に本水槽の残りの水の一部をポリタンクに移し、機材をバラし、本水槽を空にして、これらを車に載せます。水槽はキズが付かないように簡単な養生をしました。その後で魚をパッキングして車に積んだら出発します。


車は後部座席を倒し、一応ビニールシートを敷きました。大型水槽は板の上に置きます。運転席の後ろには折りたたみ式の台車が載っています。水槽や他の重い物はこれで運びました。車の積載量は少なく一回に水槽1本しか運べません。つまり水槽8本を運ぶには8往復必要です。今回は片道1時間程度ですので、仕事が終わった後、夜に1日1本ずつ運びました。夏場ですが夜間に運搬すれば温度上昇の心配はありません。渋滞も昼間より少なくなります。帰りは夜遅くなりますが、ETCの夜間割引で高速道路料金も安くなります。また夜は人目につき難いという利点もあります。(別に悪いことをしている訳ではありませんが、不審な車だと思われる可能性もあります。)


魚はビニール袋にパッキングして白い手提げビニール袋に入れました。水漏れに備えると同時に魚の目隠しになります。これを段ボール箱に入れて車に積みました。この車には荷物固定用のベルトを通すフックがあります。体積的には一杯いっぱいですが、積載重量的には余裕があります。もちろん穏やかな運転を心掛けます。


さて、搬入先には未だ水槽台がありません。とりあえず水槽台を置くスペースは空けて、運んだ水槽は床に設置しました。床の面積をよく計算しておかないと場所がなくなります。水槽を半分程運んだ時点で他の家財道具の引越し(これはもちろん業者に依頼)当日になりました。まだ運んでいない水槽を一旦全て床に降ろし、水槽台を家財道具と一緒に業者に運んでもらいました。この日は小型プラスチック水槽で飼育中のモーリィの稚魚を自分の車で運びました。翌日からまた残りの水槽の運搬です。日数は掛かりましたが、大したトラブルもなく済ませることが出来ました。かなり老衰の兆候が見られる12年目のフロントーサも無事に移動でき、3ヶ月後の今も存命中です。モーリィ、キアソともに引越し後に産卵があり、新しい水にも問題なく馴染んでいると思われます。